『INFINITY to ZERO』
Liner Notes
出会いというものは、
その瞬間よりも、
あとになってから大きくなる。
いつもの季節。
いつもの朝。
いつもの画面。
そこに、ひとりの人が現れた。
最初はただ、
少し気になるだけだったはずなのに。
数文字のやり取りを待つようになり、
何でもない言葉を何度も思い返し、
まだ一度も見たことのない未来まで
勝手に思い描くようになった。
誰かを想うことは、
思っていたほど綺麗じゃなかった。
笑っていてほしい。
無事でいてほしい。
守れたらと思う。
けれど、その願いのすぐ隣には、
自分を選んでほしい。
という、
あまり格好のよくない気持ちもあった。
近づきたいと思うほど、
自分が遠くにいることを知る。
知りたいと思うほど、
知らないことばかりだと気づく。
そして、
優しさだと思って差し出したものが、
相手にとっても
同じ名前のものとは限らない。
そうして、
小さかったはずの感情は
いつの間にか
ずいぶん遠くまで膨らんだ。
INFINITY。
けれど、
膨らんだものは
いつまでも膨らみ続けるわけではない。
ある日、
世界から君がいなくなる。
信号は変わる。
電車は来る。
朝になれば仕事へ行く。
世界は驚くほど普通に
昨日の続きを始める。
ただ、
視線だけが少し遅れる。
もういないと知っているのに、
昨日まで君がいた場所を探してしまう。
『キミノイナイセカイ』。
そして、
そこまで来ても
何かが綺麗に終わるわけではなかった。
机の上には、
期限の切れた領収書。
途中で止まった言葉。
誰かにもらったもの。
捨てられないもの。
いろんなものが
同じ場所に重なったまま残っている。
だから最後の曲を
『未整理』と呼ぶことにした。
忘れたわけじゃない。
乗り越えたわけでもない。
正しい答えを見つけたわけでもない。
ただ、
あなたに会えてよかったと思う。
その言葉だけは、
まだ机の上に置いてある。
INFINITYだったものが
ZEROへ戻っていくまで。
これは、
恋が叶うまでの物語ではない。
失恋から立ち直るための物語でもない。
ひとつの感情が生まれ、
膨らみ、
形を変え、
やがて名前を失っていく。
その途中で見えた景色を、
八曲にした。
01. なつのおわり
初夏に現れた「君」と、
夏の終わりまで。
まだ何も始まっていない。
けれど、すでに心だけは
灼熱の中にいる。
25階の窓と、
アットマークの向こうの窓。
現実と画面。
二つの世界を行き来しながら、
最後に残るのは、
「きみは、どこにいく?」
という問い。
このアルバムのすべては、
ここから始まる。
02. ラリー
ほんの数文字。
それだけなのに、
曇った朝が少しほどける。
返事が来る。
こちらも返す。
また返ってくる。
大した会話ではない。
それでも、
画面を閉じたあとまで
言葉だけが残っている。
まだ恋と呼ぶには小さすぎる感情が、
少しずつ日常へ入り込み始める曲。
03. 二日目のカレー
たった数文字のやり取りから、
想像だけがずいぶん先へ行く。
特別なディナーではなく、
二日目のカレー。
華やかな恋ではなく、
何でもない夜を一緒に過ごすこと。
まだそんな距離ではないと
自分でも分かっている。
だからこそ、
「恋じゃなくて、たぶん迷走」
と言い聞かせながら、
未来だけが妙に鮮明になっていく。
妄想と生活の境界線にある曲。
04. マグニチュード
夜中に街が揺れる。
同時に、
心まで揺れる。
君が無事なのか分からない。
連絡するほど近くはない。
けれど、
何もしないで眠れるほど遠くもない。
ニュースと時計を行ったり来たりしながら、
初めて気づく。
自分が知っている君は、
君が見せてくれた一部分でしかない。
それでも、
「君がひとりで震えてなきゃいい」
と願ってしまう。
感情が妄想から現実へ
一歩踏み込んだ曲。
05. セーフベース
誰かの前だけで、
人は子供みたいな顔をすることがある。
そこなら大丈夫だと、
身体のほうが先に知っている場所。
そんな場所になれたら。
でも、
その相手が自分とは限らない。
むしろ、
自分ではない可能性のほうが高い。
「守りたい」でも
「笑わせたい」でもない。
ただ、
俺の前だけ
力を抜いて笑ってほしい。
そして最後に、
「俺じゃダメですか?」
と初めて、
願いがむき出しになる。
このアルバムで、
最も「選ばれたい」という感情が露出する曲。
06. セイレーン
傷つけられたことは覚えている。
けれど、
自分が誰かを傷つけたことは
案外忘れてしまう。
守ったつもり。
愛したつもり。
優しくしたつもり。
それらは、
届いた先でも
同じ意味を持つとは限らない。
誰かを悪者にして終わるのではなく、
「そんなつもりじゃなかった。
私も、あなたも」
という場所まで行く。
このアルバムの中で、
恋そのものから一度離れ、
人と人との間に起きる
不可逆なすれ違いを描いた曲。
07. キミノイナイセカイ
毎日見ていたものが、
ある日なくなる。
街は変わらない。
信号も、
朝のホームも、
昨日までと同じように動いている。
それなのに、
視線だけが
もうないものを探してしまう。
戻ってほしいと叫ぶほどではない。
ただ、
空が少し広すぎる。
「君」の不在と、
日常の風景から何かが消えることを
同じ輪郭で描いた曲。
ここで、
膨らみ続けていた感情は
ようやくZEROへ向かう。
08. 未整理
最後に残ったのは、
綺麗な答えではなかった。
散らかった机。
期限の切れた領収書。
書きかけの言葉。
捨てられないもの。
思っていたものとは
少し違う景色。
それでも、
「あなたに会えてよかったと思う」
その一行だけは残っている。
忘れないとも言わない。
忘れるとも言わない。
次へ進むとも言わない。
ただ、
まだ何かを書く場所だけは残っている。
『INFINITY to ZERO』は、
そこで終わる。
Liner Notes
出会いというものは、
その瞬間よりも、
あとになってから大きくなる。
いつもの季節。
いつもの朝。
いつもの画面。
そこに、ひとりの人が現れた。
最初はただ、
少し気になるだけだったはずなのに。
数文字のやり取りを待つようになり、
何でもない言葉を何度も思い返し、
まだ一度も見たことのない未来まで
勝手に思い描くようになった。
誰かを想うことは、
思っていたほど綺麗じゃなかった。
笑っていてほしい。
無事でいてほしい。
守れたらと思う。
けれど、その願いのすぐ隣には、
自分を選んでほしい。
という、
あまり格好のよくない気持ちもあった。
近づきたいと思うほど、
自分が遠くにいることを知る。
知りたいと思うほど、
知らないことばかりだと気づく。
そして、
優しさだと思って差し出したものが、
相手にとっても
同じ名前のものとは限らない。
そうして、
小さかったはずの感情は
いつの間にか
ずいぶん遠くまで膨らんだ。
INFINITY。
けれど、
膨らんだものは
いつまでも膨らみ続けるわけではない。
ある日、
世界から君がいなくなる。
信号は変わる。
電車は来る。
朝になれば仕事へ行く。
世界は驚くほど普通に
昨日の続きを始める。
ただ、
視線だけが少し遅れる。
もういないと知っているのに、
昨日まで君がいた場所を探してしまう。
『キミノイナイセカイ』。
そして、
そこまで来ても
何かが綺麗に終わるわけではなかった。
机の上には、
期限の切れた領収書。
途中で止まった言葉。
誰かにもらったもの。
捨てられないもの。
いろんなものが
同じ場所に重なったまま残っている。
だから最後の曲を
『未整理』と呼ぶことにした。
忘れたわけじゃない。
乗り越えたわけでもない。
正しい答えを見つけたわけでもない。
ただ、
あなたに会えてよかったと思う。
その言葉だけは、
まだ机の上に置いてある。
INFINITYだったものが
ZEROへ戻っていくまで。
これは、
恋が叶うまでの物語ではない。
失恋から立ち直るための物語でもない。
ひとつの感情が生まれ、
膨らみ、
形を変え、
やがて名前を失っていく。
その途中で見えた景色を、
八曲にした。
01. なつのおわり
初夏に現れた「君」と、
夏の終わりまで。
まだ何も始まっていない。
けれど、すでに心だけは
灼熱の中にいる。
25階の窓と、
アットマークの向こうの窓。
現実と画面。
二つの世界を行き来しながら、
最後に残るのは、
「きみは、どこにいく?」
という問い。
このアルバムのすべては、
ここから始まる。
02. ラリー
ほんの数文字。
それだけなのに、
曇った朝が少しほどける。
返事が来る。
こちらも返す。
また返ってくる。
大した会話ではない。
それでも、
画面を閉じたあとまで
言葉だけが残っている。
まだ恋と呼ぶには小さすぎる感情が、
少しずつ日常へ入り込み始める曲。
03. 二日目のカレー
たった数文字のやり取りから、
想像だけがずいぶん先へ行く。
特別なディナーではなく、
二日目のカレー。
華やかな恋ではなく、
何でもない夜を一緒に過ごすこと。
まだそんな距離ではないと
自分でも分かっている。
だからこそ、
「恋じゃなくて、たぶん迷走」
と言い聞かせながら、
未来だけが妙に鮮明になっていく。
妄想と生活の境界線にある曲。
04. マグニチュード
夜中に街が揺れる。
同時に、
心まで揺れる。
君が無事なのか分からない。
連絡するほど近くはない。
けれど、
何もしないで眠れるほど遠くもない。
ニュースと時計を行ったり来たりしながら、
初めて気づく。
自分が知っている君は、
君が見せてくれた一部分でしかない。
それでも、
「君がひとりで震えてなきゃいい」
と願ってしまう。
感情が妄想から現実へ
一歩踏み込んだ曲。
05. セーフベース
誰かの前だけで、
人は子供みたいな顔をすることがある。
そこなら大丈夫だと、
身体のほうが先に知っている場所。
そんな場所になれたら。
でも、
その相手が自分とは限らない。
むしろ、
自分ではない可能性のほうが高い。
「守りたい」でも
「笑わせたい」でもない。
ただ、
俺の前だけ
力を抜いて笑ってほしい。
そして最後に、
「俺じゃダメですか?」
と初めて、
願いがむき出しになる。
このアルバムで、
最も「選ばれたい」という感情が露出する曲。
06. セイレーン
傷つけられたことは覚えている。
けれど、
自分が誰かを傷つけたことは
案外忘れてしまう。
守ったつもり。
愛したつもり。
優しくしたつもり。
それらは、
届いた先でも
同じ意味を持つとは限らない。
誰かを悪者にして終わるのではなく、
「そんなつもりじゃなかった。
私も、あなたも」
という場所まで行く。
このアルバムの中で、
恋そのものから一度離れ、
人と人との間に起きる
不可逆なすれ違いを描いた曲。
07. キミノイナイセカイ
毎日見ていたものが、
ある日なくなる。
街は変わらない。
信号も、
朝のホームも、
昨日までと同じように動いている。
それなのに、
視線だけが
もうないものを探してしまう。
戻ってほしいと叫ぶほどではない。
ただ、
空が少し広すぎる。
「君」の不在と、
日常の風景から何かが消えることを
同じ輪郭で描いた曲。
ここで、
膨らみ続けていた感情は
ようやくZEROへ向かう。
08. 未整理
最後に残ったのは、
綺麗な答えではなかった。
散らかった机。
期限の切れた領収書。
書きかけの言葉。
捨てられないもの。
思っていたものとは
少し違う景色。
それでも、
「あなたに会えてよかったと思う」
その一行だけは残っている。
忘れないとも言わない。
忘れるとも言わない。
次へ進むとも言わない。
ただ、
まだ何かを書く場所だけは残っている。
『INFINITY to ZERO』は、
そこで終わる。