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アルバム・レビュー
メロウでダビーな日常サウンドトラック、Primal Dubの続編、前作同様更に洗練された珠玉のDub集!!新鋭レーベル、Hoodish Recordingsの第一弾としてリリースされたMaLのソロアルバム「Primal Dub」はインストアルバムながらiTunesレゲエチャート1位を獲得、各方面から好評を得た。今回の続編はメロウで穏やかなダブが展開された前作の流れも踏襲し、更に洗練されたDubも新境地へと向かいつつ、前作が好きなリスナーも納得させる形で進化を遂げた。フィーチャリング・アーティストもレーベルメイトでもあるIRONSTONEがギター、ボイスにACHARU、ジャンベにSHOWGO、バイオリンのHirokazu Suetake、そして前作は長女がトランペットで参加したのもハイライトの一つであったが今回は次女がアルトサックスとボイスでの参加というのも聴きどころ。カバーアートは前作同様、東京のアンダーグラウンドシーンに灯を灯し続けるBEST MATCH CORNERによるもの。
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『Prime Dub』、その続編、MAL(PART2STYLE)による『Prime Dub 2』が約1年ほど
のスパンでここにリリースされた。本人が果たしてそう思っていたかどうかはともかく、
前作を一聴したときに「DJ PYTHONへの高田馬場からの回答」と、ついつぶやいてして
しまいたくもなったわけだが、本作もまたチルアウトな雰囲気の柔らかなダブ・サウンド
がじんわりと広がっていく。その作品性は、レゲエ / ダブ愛好家はもちろん、チルなラッ
プやR&B、そしてここ数年でレゲエの再発などでもキーワードであがってきているいわ
ゆるバレアリック・サウンド的な解釈で聴かれることも決して不思議ではない、そんな作
品ではないだろうか。
全治9ヶ月の大けがの末、80日間にも及ぶ入院の間に思いついたという『Prime Dub』の
「ダブをキーワードにした日常のサウンドトラック」というテーマ(前作『Prime Dub』
に関する顛末は大石始のnote掲載のMALインタヴューに詳しい、本作を知る上でも重要
なのでぜひそちらをぜひ参照のこと)。少々余談だが、それはどこかブライアン・イーノ
が交通事故後、その病床での、とある音楽体験をヒントとして「アンビエント・ミュージ
ック」を着想したというエピソードを思い出す話でもある。アンビエント・ミュージック
同様、生活の一部に溶け込む音楽ということで言えば、音楽への視点の変化、身体性とは
また違った役割・魅力のある音楽の創出というところで、そこにどこか共通点を見いだす
ことも可能だろう。ダンスフロアの身体的な刺激とも違った、リズムとサウンドによっ
て、日常のフィーリングを豊かにする、そうした音楽がここにはある。
続編ではあるが、入院生活を端緒とした、よりパーソナルな前作に比べて、本作はその布
陣にしても少し開いたコミニケーションを感じることのできる作品となった。おそらく、
なにより前作のリリースでスタートした、高田馬場の音楽居酒屋「KUSUDAMA」が主宰
するレーベル、HOODISH RECORDINGSの存在が大きいのではないだろうか(もちろん
本作のリリースもHOODISHからのリリースとなる)。フィーチャリングには、レーベ
ル・メイトでもあるIRONSTONEがギター、ボイスにACHARU、ジャンベにSHOWGO
がレコーディングにも参加、更にバイオリンのHirokazu Suetake、そして前作のMalの長
女の参加に続き、今回は次女がアルトサックスとボイスにて参加している。前作で蒔いた
種がじわりとその根を張り巡らし、そして本作へ、というローカルなコミニティにおける
コミニケーションの芳醇さが作品へと結実しているということではないだろうか。
デジタル・リリースは、先にリリースされている限定ミックス・テープとは違ったセパレ
ート仕様の楽曲達。DJ / セレクターとして長らく活動してきた彼の手腕が発揮された
「流れ」を持ったミックスとも違った時間軸で、アルバムとしてじっくり堪能するもよ
し、もちろん現場での「流れ」のセンスのなかで生み出された本作のサウンドは、またさ
まざまな現場に「流れ」を作りだせるDJツールとしての側面を持つことは言うまでもな
いだろう。
カヴァー・アートは前作同様、東京のアンダーグラウド・シーンで噂のマッチ箱職人、
BEST MATCH CORNERが担当。
人生の大部分を占めるのは膨大な日常だ、そんな日常にじわりと染み入るサウンドトラッ
クとしてのダブ。繰り返す日常、繰り返しながらも気分、体調、その機微はいつも違う、
メロウなメロディに聴きいってみたり、時にはリズムにフォーカスして小躍りするもよ
し、そんな毎日違って繰り返す「日常のVERSION」を彩る「Prime Dub」、その第2章が
ここに完成したのだ。(河村祐介)
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『Prime Dub』、その続編、MAL(PART2STYLE)による『Prime Dub 2』が約1年ほど
のスパンでここにリリースされた。本人が果たしてそう思っていたかどうかはともかく、
前作を一聴したときに「DJ PYTHONへの高田馬場からの回答」と、ついつぶやいてして
しまいたくもなったわけだが、本作もまたチルアウトな雰囲気の柔らかなダブ・サウンド
がじんわりと広がっていく。その作品性は、レゲエ / ダブ愛好家はもちろん、チルなラッ
プやR&B、そしてここ数年でレゲエの再発などでもキーワードであがってきているいわ
ゆるバレアリック・サウンド的な解釈で聴かれることも決して不思議ではない、そんな作
品ではないだろうか。
全治9ヶ月の大けがの末、80日間にも及ぶ入院の間に思いついたという『Prime Dub』の
「ダブをキーワードにした日常のサウンドトラック」というテーマ(前作『Prime Dub』
に関する顛末は大石始のnote掲載のMALインタヴューに詳しい、本作を知る上でも重要
なのでぜひそちらをぜひ参照のこと)。少々余談だが、それはどこかブライアン・イーノ
が交通事故後、その病床での、とある音楽体験をヒントとして「アンビエント・ミュージ
ック」を着想したというエピソードを思い出す話でもある。アンビエント・ミュージック
同様、生活の一部に溶け込む音楽ということで言えば、音楽への視点の変化、身体性とは
また違った役割・魅力のある音楽の創出というところで、そこにどこか共通点を見いだす
ことも可能だろう。ダンスフロアの身体的な刺激とも違った、リズムとサウンドによっ
て、日常のフィーリングを豊かにする、そうした音楽がここにはある。
続編ではあるが、入院生活を端緒とした、よりパーソナルな前作に比べて、本作はその布
陣にしても少し開いたコミニケーションを感じることのできる作品となった。おそらく、
なにより前作のリリースでスタートした、高田馬場の音楽居酒屋「KUSUDAMA」が主宰
するレーベル、HOODISH RECORDINGSの存在が大きいのではないだろうか(もちろん
本作のリリースもHOODISHからのリリースとなる)。フィーチャリングには、レーベ
ル・メイトでもあるIRONSTONEがギター、ボイスにACHARU、ジャンベにSHOWGO
がレコーディングにも参加、更にバイオリンのHirokazu Suetake、そして前作のMalの長
女の参加に続き、今回は次女がアルトサックスとボイスにて参加している。前作で蒔いた
種がじわりとその根を張り巡らし、そして本作へ、というローカルなコミニティにおける
コミニケーションの芳醇さが作品へと結実しているということではないだろうか。
デジタル・リリースは、先にリリースされている限定ミックス・テープとは違ったセパレ
ート仕様の楽曲達。DJ / セレクターとして長らく活動してきた彼の手腕が発揮された
「流れ」を持ったミックスとも違った時間軸で、アルバムとしてじっくり堪能するもよ
し、もちろん現場での「流れ」のセンスのなかで生み出された本作のサウンドは、またさ
まざまな現場に「流れ」を作りだせるDJツールとしての側面を持つことは言うまでもな
いだろう。
カヴァー・アートは前作同様、東京のアンダーグラウド・シーンで噂のマッチ箱職人、
BEST MATCH CORNERが担当。
人生の大部分を占めるのは膨大な日常だ、そんな日常にじわりと染み入るサウンドトラッ
クとしてのダブ。繰り返す日常、繰り返しながらも気分、体調、その機微はいつも違う、
メロウなメロディに聴きいってみたり、時にはリズムにフォーカスして小躍りするもよ
し、そんな毎日違って繰り返す「日常のVERSION」を彩る「Prime Dub」、その第2章が
ここに完成したのだ。(河村祐介)